HDRとは? ラチチュードとの違いは?
概要
カメラの単語のひとつであるHDR (ハイダイナミックレンジ) について、調べる機会があったので、簡単にまとめます。音声の分野でもHDRという単語が使われていたのは知りませんでした。
HDRに関するGoogleトレンドの動向
グラフがスパイクしている時は、恐らくiPhoneのカメラにHDR機能が搭載された時の事かなと。もしくは、HDR合成が流行った時かと。
HDRの意味
HDRはハイダイナミックレンジの略語です。
主に、カメラや写真、映像の用語として広まっていましたが、今回調べた所、音声分野でも使用されている単語のようでした。これは知らなかったのでちょっと驚き。
HDRとラチチュードの違い
HDRについて解説する前に、ラチチュード (latitude)について少し紹介します。
ラチチュードは、"緯度"を意味する英語で、地図領域のソフトウェアやライブラリなどではよく聞く単語です。一般的に、英語で latitude と言えば、緯度を指す事が多いのではと思います。
一方で、ラチチュードは、カメラの分野でも使われる単語です。 英語の場合は、単にlatitudeとも言われるようですが、Exposure latitude (カメラの露出の許容範囲) と表現されるようです。
カメラの分野では、ラチチュードは、光の明暗の諧調を表現できる範囲を指します。
この単語は、フィルムカメラのフィルムやデジタルカメラのイメージセンサーに使われますが、主にフィルムカメラの時代に使われていたように思います。段々と、ラチチュードという単語がダイナミックレンジに置き換わってきた印象です。
私はラチチュードという言葉を、2007年~2010年のどこかで、当時お仕事をご一緒していたカメラマンの方に教わったのを覚えています。その際に、HDRについても聞いたような記憶があります。
Canonの写真単語集では、次のようにシンプルに解説しています。
ラチチュードとは、銀塩カメラ用のフィルムがとらえることができる、明るい部分から暗い部分までの再現可能な幅のことをいいます。ラチチュードを超えた領域については、白飛びや黒つぶれという状態となります。 デジタルカメラの場合は、この幅はダイナミックレンジと呼ばれます。 Source : ラチチュード 写真用語集:特集|個人|キヤノン (https://personal.canon.jp/articles/beginner/glossary/latitude)
HDRとは
HDRあるいはハイダイナミックレンジとは、カメラや映像の分野では、明暗の表現幅を広く画像や映像に収める機能を指すことが多いです。
ここで、Canonの写真用語集からまたHDR撮影について引用します。
明暗差が大きいときに有効なHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影 見た目にはきれいでも、撮影してみたら空が真っ白になってしまったり、逆に空はきれいに写っても、地上が真っ暗になってしまうことがあります。いわゆる白飛びや黒つぶれといった現象です。明暗差が激しいと、カメラはすべての明るさを写し取ることができないのが原因です。
このカメラが再現できる明るさの幅をダイナミックレンジといいます。明るさの差が大きい場合、明るいところや暗いところも再現できるように撮影する機能としてHDR撮影があります。HDR撮影はHigh Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)撮影というもので、明るさの違う写真を複数枚撮影し、カメラ内やスマートフォン、RAW現像ソフトで合成することで、より明るさの再現幅が広い画像を作り上げます。
Source : HDR 写真用語集:特集|個人|キヤノン (https://personal.canon.jp/articles/beginner/glossary/hdr)
このように、HDRと明暗の尺度というより、明暗の激しい画像を、明と暗の両方の諧調を表現するための機能と言えます。
なので、単にHDRと言うのではなく、HDR機能、HDR撮影、と言った方がしっくりくるかと思います。
HDR機能を搭載されたデジタルカメラやスマートフォンのカメラでは、明度の違う複数の写真を撮影して合成する事で、一枚の画像では表現できない明暗のグラデーションを表現できるという事になります。
この機能の恩恵を受けられるのが、明るすぎる日中や、夜景、夜の人物撮影などではないかと思います。 カメラのフォーカスを当てた場所によって、明るさが意図に反して変わってしまうという現象を経験した方もいるかと思いますが、この現象に対応できるのがHDR撮影です。
今では、スマートフォンで簡単にHDR撮影ができるようになりましたが、以前は、スマートフォンやデジタルカメラ側が処理する合成を、Photoshopで行う手法も流行しました。
もちろん、Photoshopにおける写真編集は、単にHDRのための編集ではなく、意図のあるデザイン手法という意味合いも大きいですが。
撮る側ではなく見る側から見るHDR
次は、表示する機器について少し解説します。
例えば、4K対応のビデオカメラで撮影した映像を、ブラウン管のテレビやガラケーで再生したとして、4Kの美しさは表現されるかと言えば、そうではないですよね。
つまり、最高の画質で撮影したデータも、それを表示する側の機器が、高画質のデータを表現する能力を持っていないと意味がありません。
見る側の機器でいうと、より広い幅の色や明暗の諧調が表示可能なモニター、ディスプレイが販売されているようです。
規格もあるようです。
音におけるHDR
HDRオーディオとも言われるようですが、こちらも表現可能な音域の幅を広める技術のようです。ハイレゾとの違いがあるのかどうか…。この辺りは勉強中です。
ウェブにおけるHDR - AVIFとWebP
HDRについて改めて調べるきっかけとなったのが次世代の画像フォーマットAVIF (AV1 Image File Format) です。
これまで、次世代の画像フォーマットはWebPかなと思っていたのですが、AVIFを知り、さらにGoogleがAVIFの画像を指定した検索に対応したというニュースを知り、調べることになりました。
そして、このAVIFがHDRに対応しているという事で、HDRについて改めて調べて、この記事を作成しました。
さらに驚いたのが、AVIFとWebPの画像比較を紹介されている記事で、グラデーションの表現の違いでした。
WebPは画質を下げるとグラデーションの表現に弱くなるようです。
これは、今まで知らなかったので、勉強になりました。
最後に
画質というものは、どんどん進化しますね。
ただ、良いカメラで撮影した写真や映像が、一般家庭のディスプレイで、100%のクオリティで表現される割合はどのくらいなんだろう、とも考えたりします。みんながみんな、いいディスプレイで見てるわけではないですし。